今、着たい僕らの洋服 - Beauty & Youth | United Arrows
今、着たい僕らの洋服 - Beauty & Youth | United Arrows

第2回 洋服の物語は、おもしろい

アイテムユーティリティアウター

お客さまとの会話のなかで。洋服好きが集うスタッフルームで。日々お店に立ち続けるセールスパーソンだからこそ感じられることがある。商品会議の途中、丸の内店の中村圭佑が手を挙げたのはアウターについて。今、着たいのはモッズコートとマウンテンパーカ。そこにどんな気持ちがあるのだろう。お店近くの喫茶店で待ち合わせた。

中村圭佑

Profile中村圭佑
BEAUTY&YOUTH 丸の内店セールスパーソン。2017年に入社後、同年11月より現店のオープニングスタッフに。なんでも追求したくなる性格から、洋服についても勉強の日々で、休日はもっぱら古着屋巡り。メンズ・ウィメンズ問わず着こなすジェンダーレスなスタイルの25歳。

今日はよろしくお願いします。

中村圭佑(BEAUTY&YOUTH スタッフ)
こちらこそ、よろしくお願いします。

早速ですが。中村さんが商品会議で提案したのが、このモッズコートとマウンテンパーカだと聞きました。

中村
はい。今、フレアパンツが気になるよね、ということもそうなんですが、長く続いている90’sのリバイバルに加えて、ここ最近は60’s、70’sのムードが入ってきている感覚があって。

はい。

中村
それで、ここ半年くらい休みの日に古着屋さんを回って、当時生まれたアイテムを探したりしていたんです。そうしているうちに、アウトドアやミリタリーウエアが本格的に気になりはじめて。

当時のアイテムって、今の感覚で着るとアームやボディが太かったりしますよね。

中村
そうですね。ただ、僕は今25歳なんですけど、ファッションが好きになった頃から、当時のオリジナルをアップデートしたものに触れてきている世代だと思っていて。ルーツというか、そもそものベースがあまり分からないようなところもあるんです。なので、その当時の野暮ったい感じがいい意味ですごく新鮮だなと思ったり。

なるほど、世代的になんでもアップデート済みのもの。

中村
はい。もともと古着がきっかけでファッションに興味を持って、プレッピーやモード、自分なりにいろいろ着てきたんですけど、テイストは違えど、元ネタを掘っていくのがすごいおもしろくて。最近だとヴァージル・アブローの〈LOUIS VUITTON〉もそういう視点で見ていたりします。70’sも90’sもリアルタイムで体験していない分、先輩に話を聞いたり、映画や本を見て勉強するというか。おもしろいです。

最近はそういう感覚が少なくなっている印象があります。

中村
そうかもしれません。モッズコートも、もともとは米軍が作ったもので、寒い地域で着ることを想定して、防寒ライナーやコヨーテのファーを使ったフードがあって、手袋をしていても着脱ができるようにフロントジップに紐がついていたりする。裾の後ろが燕尾状になっているディテールを取って「フィッシュテール」という風にも呼ばれていますよね。

そうですね。

中村
そういう洋服のバックボーンを知るとより愛着が湧くというか。先輩たちからしたら当たり前かもしれませんが、僕にとっては。

ファッションウエアとして知られるようになったのは、1960年代のイギリスですよね。モッズを中心に。仕立てたスーツが汚れないように上からガバッと羽織ったりして、足元は革靴。

中村
そうですね。今回作ったものも、腕の袖のテープ紐や燕尾型の裾、風を通さないフロントの比翼仕立てなど、オリジナルのディテールを踏襲しています。ミリタリーのちゃんと用途があるデザインなので、普通に使えるし便利ですよね。そうやって今の生活でも活きるディテールはなるべく残しています。

用途がある洋服。

中村
それをファッションとして着るのがかっこいい。男性的なんですかね、こういう感覚って。

分かります。今回、カラーは3色展開。

中村
グレーとブラックとオリーブです。個人的にセメントっぽいベタッとしたグレーが特に気に入っていて、オリジナルにはないけれど、落ち着いていて大人っぽく着れる色だなと思っています。

確かに、シックな印象になりますね。

中村
そうですね。Aラインのシルエットも特徴的で、フロントを全締めして着るのもいいし、開けてインナーのレイヤードを見せてもいい。トラッドに、それこそスーツの上から羽織ってもいいですし、ストリートにも合わせられる普遍性があって、1枚持っておくと本当に重宝するアウターです。

マウンテンパーカについても聞かせて下さい。

中村
今回は、コシがあって丈夫なんだけど、手触りや見え方は上品に見える生地で作りました。マウンパの特徴のひとつである大容量のポケットは、ジップとフラップタイプを使い分けて、機能面も充実させています。機能的なんだけど、クリーンな素材感もあって上品に見えるようなムードというか、そのバランスに注意しました。マウンパは、「60/40クロス」という生地でも有名なアメリカの〈SIERRA DESIGNS〉の影響が大きですよね。これも60年代。作り手が海で遭難をして、九死に一生を得た経験があって、自分たちが「命を託せる」服を作ろうというのがきっかけだったという話を知って、おもしろいなあと。着ている洋服が命を左右することがあるって。

おもしろい。ストーリーがありますね。

中村
こういう話を知ると、なんというか、洋服をすごく身近に感じられます。

確かに、想像が膨らむというか、思い入れも強くなる気がします。

中村
そうですね。デニムやスニーカーと合わせるのももちろん良いんですけど、スラックスや革靴の合わせも良いかなと。クラークスのようなポテッとしたシューズとの相性もいい。素材が上品なので、アウトドア色が強くなりすぎず、大げさな感じにならないというか。

はい。シルエットも大きすぎず。

中村
今回、そこも大きなポイントなんです。モッズコートとマウンパのどちらもに共通して意識したことですが、マウンパでいえば、丈は長すぎず、身幅も大きすぎない。モッズコートは、スーツやジャケットの上からラフに羽織れるゆとりはあるけれど、ダボッとするのとは違うサイズ感。

どんな理由からですか?

中村
流行りに乗っかろうっていう感覚はなくて、今、着たい、欲しいなって思ったものを提案するのが今っぽいなと考えていて。今、ビックシルエットが主流になっているなかで、そろそろ違うものをという感覚があったんです。時代の逆をいきたいというより、洋服の適正なサイズ感やフィット感はとても考えられてできているものなので、それが1番活きるバランスで着ることで、シルエットも綺麗に出る。理由もなく、ビッグサイズで、というのは少し違うかなと思ったんです。

なんでも大きく、という風潮はありますね。

中村
今日のパンツもそうなんですが、僕自身、身長が低くてウエストが細いので、ウィメンズの洋服も着ていて。個人的に大きすぎる洋服が似合わないというのも今回のサイズ感へのこだわりに関係しているのかもしれません。

時代的に、メンズ・ウィメンズの境もよりフラットになっていますよね。

中村
今、お店に19歳のスタッフがいるんですが、彼らの世代はより顕著だと思います。性別のカテゴリーとは違うところで洋服を見ていて、よりフラット。どんな洋服も先入観なしに見て自分に取り入れている印象で、すごくおもしろいですね。ただ、僕はその洋服が生まれた背景を知った上でフラットな目線で見てみたいんです。

知ると広がることがありますね。

中村
先ほどのサイズ感の話じゃないですけど、モッズコートもマウンパも、背景を知っているから思いつく遊び、というかギャップのある着こなしが生まれたりすると思うので。ルーツを自分なりに解釈して、そこにのっとったり、裏切ったりするような。感覚的な話ですが、そうすることで洋服が平面じゃなくて、立体的になっていく。そうやって、もっとおもしろがれると思うんです。